我が家のキッチンは、私の城だ。ピカピカに磨き上げたステンレスのシンクを眺めるのが、毎日の家事のささやかな喜びだった。しかし、ある夏の日のこと、その平和な城に異変が起きた。船橋市で水もれ修理の配管を交換してはどんなに換気をしても、シンク周りから漂ってくる、生ゴミとも違う、もっと根本的で不快な臭い。最初は気のせいか、ゴミ箱のせいだろうと自分に言い聞かせていたが、臭いは日に日に存在感を増し、ついに見過ごせないレベルに達した。犯人は、この城の中心、シンクの排水溝にいる。そう確信した私は、ゴム手袋をはめ、固く決意を固めて、長きにわたる戦いの火蓋を切ったのだった。 意を決して、排水溝の蓋と、その下にあるゴミ受けを外す。その瞬間、私は思わず息を呑んだ。そこに広がっていたのは、言葉を失うほどの光景だったからだ。黒と茶色が混じり合った、粘土のような、それでいてゼリーのような、謎の物体が配管の入り口にびっしりとこびりついている。これが、あの悪臭の発生源。正体不明の敵を前に、私の脳裏には「どうやって倒せばいいんだ」という絶望感と、「これを放置していたのか」という自分への嫌悪感が渦巻いた。御所市が台所専門チームによるキッチントラブルに対し、使い古しの歯ブラシを手に取り、無我夢中でこすり始めた。しかし、敵は手強かった。ブラシでこすればこするほど、ドロドロの汚れは広がり、悪臭はさらに勢いを増すばかり。まるで、眠れる獅子を起こしてしまったかのようだった。 途方に暮れた私は、スマートフォンで「排水溝 掃除 最強」と検索した。すると、「熱湯をかければ油汚れは一発」という、なんとも頼もしい情報が目に飛び込んできた。これだ!と、すぐさまやかんに水を満たして火にかけた。沸騰したお湯がシューシューと音を立て始めた、まさにその時、ふと別の記事の見出しが視界に入った。「待って!排水管に熱湯は絶対ダメ」。慌ててその記事を読むと、塩化ビニル製の排水管は熱に弱く、変形や破損の原因になるという衝撃の事実が書かれていた。もし、あのまま熱湯を流し込んでいたら、我が家のキッチンは水浸しの大惨事に見舞われていたかもしれない。背筋が凍る思いだった。正しい知識なしに戦いを挑むことの恐ろしさを、私はこの時、痛感した。 改めて安全で効果的な方法を探し、私は「重曹とクエン酸」という、魔法の粉の組み合わせにたどり着いた。半信半疑ながら、排水溝に重曹をたっぷりと振りかけ、その上からクエン酸を投入し、ぬるま湯を注ぐ。すると、シュワシュワと音を立てて白い泡が勢いよく盛り上がり始めたではないか。まるで、私の代わりに正義のヒーローが敵と戦ってくれているかのようだ。その光景に、私は確かな勝利を予感した。三十分後、給湯器の温度を一番高く設定し、勢いよくお湯を流し込む。すると、あれほど頑固にこびりついていたドロド-ドロの塊が、嘘のように剥がれ落ち、吸い込まれていった。そして、あれほど私を悩ませていた悪臭も、すっきりと消え去っていた。 この長きにわたる戦いを終え、私は一つの教訓を得た。それは、敵は育ててから倒すのではなく、そもそも育てないことが肝心だということ。あの日以来、私はフライパンに残った油を必ず拭き取ってから洗い、排水溝のネットは毎日交換し、一日の終わりには必ずお湯を流すようになった。あのドロドロとの遭遇は悪夢だったが、おかげで私の城は、以前にも増して清潔で快適な場所になった。キッチンに立つ全ての戦友たちよ、排水溝の平和は、日々の小さな心がけによって守られるのだ。
我が家のキッチン排水溝ドロドロ戦争記